カフェ経営のポイント|席稼働率を最重要の業績評価指標として捉える

カフェ経営開業・経営

カフェは開業、参入に人気の業態だ。
開業の場合はフードメニューの調理の簡易性、コーヒーを売るので儲かりそう、昔からの夢でオシャレに自由に働きたい、経営したいと言うのが人気の理由だろう。

異業種からの参入の場合は、既存事業のPR、ブランディング目的であったり、既存事業とは別の新たな収益の柱を飲食事業で検討し、市場規模が大きく初めてでもチャレンジしやすそうなカフェから始めるといったケースが多いのではないだろうか。

両者に共通するのは、参入障壁の低さに重点を置いているという点だ。
参入しやすいと言うことはそれだけ競合数も多いということを念頭に置いて経営しなければ儲からない。

ここではそうした点を踏まえた上で、カフェ経営で押さえておくべきポイントについて解説したい。

スポンサーリンク

一般的なカフェの収支構造

項目構成比
売上高100.0%
売上原価30.0%
売上総利益70.0%
人件費35.0%
広告宣伝費3.0%
減価償却費5.0%
家賃10.0%
通信費0.5%
ゴミ処理手数料0.2%
クレジット手数料0.4%
水光熱費3.0%
消耗品3.0%
清掃費1.0%
雑費1.0%
その他経費2.0%
販売管理費合計64.1%
営業利益5.9%
EBITDA10.9%
原価率+人件費率+家賃比率(FLR)75.0%

家賃や減価償却費は立地や初期投資によって当然詳細は変わってくるが、ある程度の売上を確保できているカフェであれば上記のような収益構造の店舗が多いと思う。着目すべき点は、コーヒーを販売しているからといって原価率が低いという訳では無いという点と、人件費率が上がりやすいという点だ。

理由は多くのカフェの売上構成比のほとんどがランチ売上に依存するという点と、営業時間が長いことによる人件費コントロールの難しさにある。

最重要ポイントは席稼働率

この2点に加え、カフェ特有の業態属性が存在する。言うまでもないが、滞在時間が長いと言う点だ。

これらを踏まえると、最も重要な業績評価指標(KPI)は席稼働率となる。つまり、営業時間中の空席を無くすことが出来るかと言うことだ。

まずこの部分を解決できなければ、他の経営課題に向き合うことすら出来ない。理由は売上が取れないからだ。カフェで最も苦戦する理由は間違いなく売上といっても過言では無い。流行っているように見えて実は全く儲かっていないというカフェが多いのは、繁忙時の印象によるものだ。繁忙時だけを見れば採算は合っていても、その他の時間にも人件費は発生している。トータルで見ると人件費が繁忙時の売上を圧迫し、利益を食い殺しているというのはよくあることだ。

席さえ埋まれば追加注文やドリンクのお代わりを促すことも出来る。集客の難しい時間に客席を回転させるよりはずっと簡単だ。

しかし、いきなりランチと同じ単価やメニューでアイドルタイムに「来店してほしい」と訴えかけてもニーズが無いので集客できない。当然、ニーズに見合った集客につながる「何か」が必要になってくる。つまり、時間帯別に来店動機になるメニューや販売促進といったマーケティング戦略が必要ということだ。

時間帯別のマーケティング戦略が必要

カフェは大きく4つの時間帯で集客戦略を持つ必要がある。モーニング、ランチ、カフェタイム、ディナーの4つだ。ただし、これは全ての時間帯を営業しなければならないという訳では無い。商圏の客層の動きを把握した上で収益の上げやすい時間に絞って営業しても構わない。

また、時間帯別にメニューを切り替えるということも検討すべきだ。時間帯別にマーケティングを行うということは、簡単に言えば1店舗で4業態やっているのと変わらない。どの時間でもどのメニューでも注文できるという状態ではまず間違いなくオペレーションが回らない。必要に応じて8:00~11:00までのメニュー、11:00~14:00までのメニューといった絞り込みは行うべきだ

モーニングはお得感で勝負するのが王道

モーニングはお客様の予算が300~500円前後の商圏がほとんどだ。そうした予算の中では、基本的に「コーヒーだけ」の注文のお客様が比率として高くなる。その中でも粗利額をしっかり作るためには、「○円でこの内容なら納得」というお得感をどう演出するのかが極めて重要になる。

この点を上手く行なっているのがコメダ珈琲だ。コーヒー1杯のボリューム感を他店よりも多くし、トースト無料という切り口を合わせることでコーヒー1杯の下限価格を420円まであげることに成功している。結果として他の時間帯でも出数の多いコーヒーの粗利額が上がり、利益を上げやすいという構造だ。

本質は同じであるが、違う手法を取っているのが桜珈琲だ。桜珈琲では、セットドリンクと逆の見せ方をすることで、500円〜800円予算の客層の獲得に成功している。モーニングをドリンク+210~でボリューム満点のモーニングが付くという方法だ。「コーヒーだけ」の注文の客層に「+210円で付くなら・・」という購買心理を働かせることに成功している。

こうしたお客様が「お得」と感じる心理状況を作れるかどうかが、モーニングで集客に成功するためのポイントだ。

ランチは馴染み性×コンセプトを意識する

ランチは満席で回転もしているという方はこの部分は読み飛ばしてもらって構わない。最も集客の容易なランチタイムに集客が出来ていないという店舗は、そもそも商品力が低いかあまりに馴染みの無い商品しかメニューに無いというケースがほとんどだ。商品力に関しては、別の記事で紹介しているのでここでは触れないが、興味のある方は参照してほしい。

馴染性とは簡単にいうと、ランチで食べ慣れている商品のことだ。例をあげると「カレーを食べに行こう」とは日常的に会話に出るが、「ビーフンを食べに行こう」とはあまり出ないといった具合だ。ランチは基本的に一人一品しか注文されない。お客様は失敗できないのだ。当然お客様の選択肢は「味が想像できるもの」に比重が偏る。馴染み性を持たせるとは日常的なランチメニューを持つと言うことだ。

しかし、ただ馴染みを持たせるだけでは差別化できない。こうした馴染みの商品にお店のコンセプトが反映されて、初めてここでしか食べられないと言う希少性を持たせることができる。

例えば、最近増えている「健康」がキーワードのカフェでカレーを提供するのであれば、野菜がゴロゴロ入ったカレーにするなどが馴染み×コンセプトを意識した商品だと言えるだろう。

カフェタイムはトレンドのスイーツ付加

カフェタイムの集客を最も簡単に成功させるポイントはトレンドのスイーツを取り入れることだ。話題になっていて知っているが、食べたことはないという客層を集客するのが最も効率が良い。トレンドを知るには、常にリアルな情報を収集し続ける必要がある。そこで役立つのがSNSだ。特にインスタグラムはカフェのトレンド情報の収集には今や必須のツールといえる。カフェの経営に関わる方はぜひ、カフェ巡りをしている女性や#カフェなどをフォローして情報を収集すべきだろう。可能であれば実際に訪問して集客状況まで確認できるとさらに良い。

ディナーは利用動機を絞り込み、ニッチな動機を狙う

結論から言うと、カフェでディナーに集客を行うことは簡単ではない。理由は居酒屋や焼肉、ファミリーレストランなども競合になってしまうからだ。そうした競合と対等に渡り合うためには当然商品の品揃えが必要になってくる。当然、アルコールの品揃えも持つ方が良いだろう。

こうした対応はオペレーションに大きな負荷をかけることになるし、多くのカフェでは現実的ではないだろう。時間帯別の人時売上を見た上で、早めにクローズするという選択肢も視野に入れておくべきだ。

しかし、「ディナーのニーズも取らなければ収支が合わない」、「ディナーにチャンスがある商圏」という場合はチャレンジする価値は十分にある。理由は、客単価が他の時間帯と比較すると上がりやすいからだ。

競合過多の市場の中で勝ち残るためには、特定のニーズに特化してマーケットの中に自店をポジショニングさせるということがまず第一歩となる。その為には、利用動機を絞り込んだマーケティング戦略を取ることから始めるべきだ。

例えば、結婚式の二次会に特化したプランやコースを作成し、結婚式場に営業に行ったり、ホームページで公開したりするといった戦略だ。ディナーの時間帯に居酒屋や焼肉店ではやり切れないような利用動機を徹底して取り切ることからスタートすることで、それに付随する利用動機も獲得できるようになる。

カフェ業態の優位性

こうした経営上の難しい点がある一方で、他業態には無いカフェならではの強みというものも存在する。それは採用力が他の飲食業態に比べて圧倒的に高いという点だ。「オシャレに働ける」「カッコよく働ける」という点は、若い求職者層に人気がある。従業員のアルバイト比率が高い飲食業に置いて採用面で優位性を持てると言うことはかなりの強みだ。

この点を活かして、他業態からカフェに参入すると言うケースも少なく無い。実際に多くの居酒屋企業が収益源とは別に採用力強化のためにカフェに参入している。

まとめ

以上がカフェ経営のポイントだ。

キーワードは人件費率と家賃比率の低減、そのための重要評価指標は席稼働率。

上記を踏まえて経営することが、成功確率を高めるポイントだ。